AL-NAMROOD "Kitab Al-Awthan"

AL-NAMROOD "Kitab Al-Awthan"

販売価格: 1,100円(税込)

運命を司る女神Manat、月の神Amm、戦いの神Al-Qaum、Hubal神……イスラム教となる以前の多神教時代アラブ文化の暗部、源流を顕にするサウジアラビアのAL-NAMROOD (ALNAMROOD)。冷徹に刻まれるリズムに溶岩流のごときリフ。オリエンタルな雰囲気も禍々しさもさらに濃密となった3枚目のフル・アルバム。

2012年リリース。

Fm yokohama ROCK DRIVEのブログ内のコーナー、アジアン・ロック通信39にて紹介してます。

収録曲
01.Mirath Al Shar 2:25
02.Min Trab Al Jahel 6:47
03.Hayat Al Khlood 6:52
04.Ashab Al Aika 6:00
05.Al Quam, Hakem Al Huroob 5:27
06.Kiram Al Mataia 5:13 A
07.Ez Al Mulook 6:15
08.Bani La'em 5:18
09.Wa Ma Kan Lil Sufha Entisar 3:03

以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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新しい年を迎えると、なんとなくその時だけはこれまでの弛んだ気持ちを入れ替えて、新たな目標を掲げたりする浅はかな私。今年は、昨今の世界の状況を踏まえて”極限の状態でも生き抜く力”が欲しいと思い、様々な状況下でのサバイバル術を披露するイギリス人冒険家ベア・グリルスのテレビ番組を見てその時に備えている。無人島、ジャングル、高原、氷上、とくに砂漠の回は印象的だった。あの何もないように見える場所でさえ生き抜く術を見出すのだ。素直に関心した。

それはともかく、日本に砂漠はない。あるとすれば、草野心平の詩集「日本沙漠」か、内山田洋とクールファイブの「東京砂漠」、童謡として知られる「月の沙漠」くらいだ。イメージとしては一面砂だらけはもとより、極端な温度変化、孤独感、荒涼感等が挙げられる。まぁ、かなり過酷な場所という気がする。

そこでようやく本題。サウジアラビア王国という国は日本の5倍以上の国土を有するが、その大半は砂漠である。なおかつ、国教はイスラム教であり、ご存知のようにマッカとメディーナという2大聖地を抱えており、戒律は厳格に守らなくてはならないし、日本では考えられないような事柄が禁止されていたりもする。当然、メタルなんてもってのほか。

が、しかし、メタル・バンドはひっそりと存在しているのだ。今回はその中でも最も精力的にアルバムを発表し続け、世界中のマニアックなメタル・ファンを驚かせているオリエンタル・ブラック・メタル・バンド、AL-NAMROODを紹介しよう。

バンドの起こりはMukadars(vocal)とOstron(oriental keyboards,drums)がオリエンタルな要素を持ったバンドを創設し、その後、MEPHISOPHILUSというバンドからMephisto(guitar,bass,drums)が加入することによって、オリエンタル・ブラック・メタルというスタイルを確立する。バンドは2008年に『Atba’a Al-Namrood』というEPでデビューするが、アラビア語の歌詞、オリエンタルな旋律とパーカッションに彩られた個性豊かなブラック・メタルは好意的に受け入れられ、続く2009年には『Astfhl Al Tha’r』というフル・アルバムを制作。その後すぐにMukadarsは脱退してしまうものの、バンドは、バーレーンのメタル・バンドとして有名なNARJAHANAM、そしてSMOULDERING IN FORGOTTENで活動するMardus(vocal)、そしてカタール人ドラマーのDariusをゲストとして迎え、これまで以上にヘヴィで激しくなった2枚目のフル・アルバム『Estorat Taghoot』を2010年にリリースする。それまでホーム・レコーディングを行なってきたバンドだが、今回はバーレーンのSMOULDERING IN FORGOTTENのホーム・スタジオであるDistorted studioにて収録を行い、より力強くなったバンドのサウンドを明確に伝えている。

そして2012年1月20日。まさにこのブログに記事を書いている今日、彼らの新作『Kitab Al-Awathan』が発表となった。バンドはここに来て一段と成長し、神秘的なまでの威圧感、その強靭さと繊細さにおいては、これまでの作品を凌駕している。

今回はヴォーカルにTHAMUDのMudamerを迎え、セッション・メンバーとしてAdelというドラマーを加えた4人編成。サウジアラビアにて自身のAL-NAMROOD Studioで録音されているが、アルバム制作も過去の経験が活かされているようで、これまでの作品よりも短い期間で仕上げることが出来たと聞いている。 当然、初期の頃と比べて格段に録音状態も向上している。 音楽性も、溶岩流を彷彿とさせるギターのリフにしろ、ダークで神秘的なキーボードにしろ、オリエンタルな旋律が全体を支配しているのはもちろんだが、ウード、タブラ、ラバーバといった中東的な楽器の使用頻度が増えており、それが一層アラブ色を強め、印象的なものにしている。完全に独自のオリエンタル・ブラック・メタルなのである。

さらに歌詞のテーマだが、彼らはこれまで古代バビロンの暗部を描いてきたが、今回は『 Kitab Al-Awathan(多神教啓典)』と題されているように、イスラム教に支配される以前、アラブの源流となっている多神教時代を取り上げている。極端な宗教観念の元に生活し、これまで思考を制御され、宗教の奴隷になっている人々の様を見ている彼らだからこそ生み出せるある種の警鐘だと言える。

AL-NAMROODは間違いなく最高のバンドのひとつだ。しかし、現在のサウジアラビアにおいて、メタル・バンド、そしてメタル・ファンはそれを表に出せない。ギグはもちろん、 スタジオもないし、AL-NAMROODのアルバムを取り扱う店舗もない。表立ってメタル・ファンが集まることもできないと聞いた。日本国内のメタル・ファンが口にするのとはまさに別次元の完全なる”アンダーグラウンド”そのものなのである。

現在、若年層がかなりの割合を占めるサウジアラビアでは、外から入ってきたサブカル的なものも定着しているとは聞いてはいる。しかし、諸外国に比べれば、まだまだ極端なまでに厳格な戒律と、その一方で現代化されていく社会との歪の中で大いなる意図を持って産み落とされたAL-NAMROODは、現在蔓延っている上っ面の格好だけのバンドではない、心の底から滲み出し爆発する本当の意味での”ROCK”なのではないだろうか。ひょっとしたら、彼らの生き様と発するメッセージが何かを変えるかもしれない。そんな気がする。
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