KANKER "Mukabuku"

KANKER "Mukabuku"

販売価格: 1,800円(税込)

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商品詳細

チンタ・ロックををしみじみと

泣きのギター、情熱のハスキー・ヴォイス、日本の演歌にも通ずる憂いのメロディ。シンガポールから、今となっては貴重な哀愁のマレー・スタイルのコマーシャル・ポップ・ロック・バンド、KANKERのセカンド・アルバム。

2012年リリース。

収録曲
01.Maya 3:52
02.Miss3 4:49
03.Emosi 5:23
04. Mukabuku 3:27
05.Hari Terakhir 4:17
06.Permata Yang Hilang 5:27
07.Pelangi Cinta 4:09
08.Ayu 5:11
09.Demi Cinta 4:01
10.Gypsy Crazy Lady 3:49

以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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2013年は猛暑かつ、その暑さを今後もしばらく引きずるような予報もあるけれど、空気も徐々に変わってきて秋の気配を感じさせる日もあります。するとなぜか感傷的になってしまうこともあるでしょう。昔の切ない恋愛経験がふとよぎったり…。

ということで、今回は哀愁のマレー・ロックを初秋にいかがでしょう。
シンガポールのKANKERが始動したのは2008年。ギタリストでありメイン・ソングライターであるAidilが旧知の仲間であった、Amree(ベース)、Koko(ヴォーカル)に声をかけ、最終的にFranco(ドラム)を迎え入れて結成。2009年にはデビュー・アルバム『Kritikal』を発表。最終的には幅広い音楽性を内包したロックバンドを目指していたようだが、この頃はロックの影響が強く出ており、ハード・ロックよりのアルバムであった。
同年、バンドは、『Cinta Di Adilfitri』という断食明けの祭りハリラヤに合わせたシングルを発表。これはデュエット・ソングだが、このハリラヤに別れてしまうカップル、そして彼が戻ってくるのを待つ女性の姿を描いている。
その後、2010年には『Pelangi Cinta』というシングルを発表。こちらはハードでドラマティックなパワー・バラード。しかし、やはり離ればなれになる愛の歌。

そして、バンドは2012年にセカンド・アルバム『Mukabuku』を発表するのだが、実はこのアルバムを発表するまでの間に中心メンバーのAidil以外がすべて変わるという大幅なメンバー・チェンジがあった。脱退理由はそれぞれで、仕事とのバランスの問題や、KANKERの音楽がシンガポールの音楽市場に合わず、このままでは成功は難しいと考えてバンドを離れていった者もいたようだ。そして最終的にAidil(ギター)率いるKANKERに集められたメンバーは、Azzy(ヴォーカル)、Syam(ベース)、Epul(ドラム)、Aaron(キーボード)となった。

この新作『Mukabuku』は、よりサウンドの質が向上しただけではなく、楽曲自体の質、アレンジも巧みになっており、商業的な有用性も十分にある。つまり、より親しみやすく、ポップな面が出ているということなのだが、Aidil本人が目指す、あらゆるリスナーを取り込めるような間口の広いロック・バンドに近づいたということだろう。

また、新たに加えられたキーボードは美しいピアノやストリングスの音でドラマを演出するのみではなく、ハードな曲ではハードなオルガンの音も聴かせてくれるが、Aidil(ギター)の作るマレー・ロックならではの、そう、他の国では生まれないマレー独特の哀愁メロディを、新たに加入したハスキー・ヴォイスのAzzyが歌う事によって『Mukabuku』は近年稀に見る哀愁のマレー・ロックとなっている。ここが重要なのだ。SEARCHやM.Nasir等によって形成された哀愁のマレー・ロック・バラードはスロウ・ロックとして80年代半ばから90年代半ばくらいまで最盛期であったが、徐々に衰退していった。けれどもここに、M.Nasirを生んだ国、シンガポールのKANKERがマレー・ロックの血脈を次いでいる。「Emosi」、「Permata Yang Hilang」、「Pelangi Cinta」、「Ayu」、「Demi Cinta」辺りがそうなのだが、特に「Permata Yang Hilang」のギターの泣きっぷり、ヴォーカルの熱さは聴き手の心を鷲掴みにすることだろう。また「Miss3」などもKANKERならでは哀愁ポップ。そのほとんどが愛をテーマにして、しみじみと良い曲が並んでいる。

シンガポールの音楽業界が厳しいのはわかって入るが、こういうバンドはなんとしても生き延びてもらいたい。ひとつの文化でもあるからだ。 この血を絶やしてはいけない。

でもまぁ、まずは深くは考えず、秋の夜長、古の恋の物語の戯れにKANKERなんぞいかがでしょう。日本人の情緒にうったえるものがあると思います。
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