KRATON “The Nusantara Chronicles” CD-R

KRATON “The Nusantara Chronicles” CD-R

販売価格: 1,700円(税込)

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この王国の栄光はいつまで続くのか
この愛は守りきれるのか
この俺は誰を信じればいい
バロンは 逢魔が時に なにおもう

インドネシアのペロッグ・スケールを用いたギターにガムランを万遍なく装飾し、シンフォニックな劇的アレンジで芝居がかった男女ツイン・ヴォーカルがナレーションを挟みながら綴るヌサンタラ伝記の数々。シンガポールより現れ、神秘のヌサンタラ・メタル界へ参戦したシアトリカル・ジャワニーズ・シンフォニック・メタルKRATON、満を持して衝撃のデビュー。

*ご注意*
物語の書かれた本という形態を意識しているので通常のCDのようにジュエル・ケースには入っておりません。厚手の紙を使用したブックレットのみです。

CD-R仕様。
2013年リリース。

収録曲
01.Story One: The King Of Kings 1:56
02.Pararaton 4:34
03.Story Two: Raden Wijaya - The Birth Of Majapahit 1:29
04.Forever Unity Divine 3:33
05.Story Three: The Victory Of Gajah Mada 2:13
06.1001 Titah Ratu 5:49
07.Story Four: Malin Kundang,The Ungrateful Son 1:00
08.Hilangnya Pelangi 3:00
09.Story Five: The Principality Of Tengger 1:39
10.My Faithfully Departed 4:57
11.Story Six: The Resentment Love Story 1:04
12.Dia Berdusta 4:30
13.Story Seven: The Prophecy 0:47
14.Jangka Jayabaya 4:34

以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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毎度の事ではあるが、この時期になると、こちらの気持ちが乗り切れていないうちに街中ではジングルベルの鐘の音が徐々に聞かれるようになり、妙な気分にさせられる。鐘の音というのはなんとなく落ち着く音に分類したいところだが、このような体験を繰り返していると、一年の終わりを告げるシグナルのようなものに思えてきて焦るやら鬱ぐやら。除夜の鐘はそんな気持ちにはならないのに。

そういえば、近頃ではガムランで奏でるクリスマス・ソングというものもある。確かに、ガムランで聞かれる青銅楽器群のアンサンブルは心地よい気分にさせてくれる。その不思議な響きで世界の音楽家の音楽家を魅了し続けるインドネシアの伝統音楽であるが、日本では坂本龍一、ロック・マニア的にはKENSOがその手法を取り入れているのは良く知られているところ。また、当然ながら本国インドネシアではGURUH GIPSY、GOD BLESS、GONG2000、DISCUSを始めとして多くのバンドがガムランを取り入れたロックをプレイしてきた。最近ではLORD SYMPHONYが強力な存在として光っているのは以前こちらで取り上げた通り。また、近隣諸国をみれば、同じくこちらで取り上げた、ヌサンタラ・メタルを標榜するWYNKEN DELIRIUMも気を吐いている。

そして今回ご紹介するのはそんなガムランを大胆に取り入れたシンガポールのシアトリカル・ジャワニーズ・シンフォニック・メタル、KRATONだ。

バンドの結成は2007年。その当時ラジオで行われたジャワニーズ・シンフォニック・メタルというジャンルのコンペティションに参加するために、それまでスピード・メタルやロック・バンドで活動していたメンバーが集まり、曲作りを行い、その企画で見事に優勝を果たしたという。その後、若干のメンバー・チェンジを行つつ数曲のシングルを発表してバンドの技術を高めながら、ついに今年、『The Nusantara Chronicles』というアルバムを発表した。

つまり彼らもまたヌサンタラ・メタルのひとつとして数えられるが、この“ヌサンタラ”とは現代でいうところのインドネシアに始まり、東ティモール、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、フィリピン、パプア、タイの南部一帯を指す歴史的な用語。ヴォーカリストであり、作曲者でもあるJufri Salim曰く、現在はそれほどポピュラーではなくなったということだが、バンドのメンバーの何人かはジャワの血を継いでいる者もいるということもあって、このヌサンタラの歴史や語り継がれる民話を綿密に研究し、その中から7つの物語をアルバムに挿入している。

それは例えば、“パララトン”なるジャワのシンガサリ、マジャパイト王朝の伝記をもとにした話、貧しい家から出稼ぎに出て大成するものの、最終的には石になってしまう男の民話 “マリン・クンダン”、そして、王子と平民の女性の愛という身分の違いが生んだ悲劇の恋物語等の話が収められている。そしてそのどれもがナレーションを挟みながら演劇のごとく展開してゆくのである。

よって、KRATONはシアトリカルという部分にこだわりを持っており、メンバーの衣装もジャワ王家のものや当時の戦士をイメージしたものを着てライヴを行っているが、音楽だけを取り出してみても、Jufri SalimとSu Akbarという男女のツイン・ヴォーカル体制でより芝居がかった世界観を演出して、その他大勢のバンドとの違いをみせている。そのような演出がより強力に聴き手を物語の中へ入り込ませていくのに一役買っている。

また、楽曲の基盤となるリフやコードといったものは、ガムランで使用されるペロッグ・スケールから生み出された独特のものであり、それをメタル然として聞かせながら全体にガムランの音を響かせて強烈なエスニックさを加味し シンフォニックな荘厳さでドラマティックに仕立てている。

通常、このように土着的なものを大胆に取り入れてしまうと、泥臭かったり野暮ったいものになってしまうきらいがあるが、このKRATONは洗練され過ぎもせず、かといって田舎臭いわけでもない、実にスマートな音作りをしている。これも彼らのセンスだろう。実は作曲者のJufri Salimはきちんとした伝統音楽の教育を受けたわけではなく、すべては独学というから驚く。また、WITHIN TEMPTATIONが好きだという女性ヴォーカリストのSu Akbarもプロフェッショナルなレッスンを受けているわけではないが、KRATON加入以前にはいくつかの歌のコンペティションで優勝したり、 ‘Most Talented Mrs Singapore World’にも選ばれた事があるのだとか。ただし、彼女が最も好きなのがジェニファー・ロペスやセリーヌ・ディオンで、得にセリーヌ・ディオンを歌って歌唱力を磨いていたというのがまた興味深い。

KRATONは確かに今年アルバム・デヴューしたばかりの新しいバンドではあるが、すでにライヴのオファーやディストリビューションの話もあらゆる国から舞い込んでいるという。今年発表された民族色のあるメタル・アルバムの中でもトップ・レベルであることは間違いないのはそういうところからも証明されている。ひょっとしたら彼らは大きなものを背負ってしまったかもしれない。しかし、それをやり抜く事が彼らの使命でもある。

今、新たなる潮流が出来上がりつつあるのではないか。そろそろヘヴィ・メタル界にヌサンタラ・メタルというジャンルを加えてみるのも良いかもしれない。
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動画は「Dia Berdusta」のPVです。

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