DOGMA “Under Dogma” CD-R

DOGMA “Under Dogma” CD-R

販売価格: 1,900円(税込)

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商品詳細

ひとり また ひとり
去って行くだけの
荒れ果てた大地

親とはぐれた子供は独り無邪気に
かつての大河の底を掘り起こし
本の失われたページを読みながら
教会寺院のがれきで積み木遊び

ふいに ひかり
あわく ひかり

荒野に一匹の蛍が舞う
子供はどこまでも後を追い
蛍は果てしなく導いた


天に遣わされたかのような神秘性を携える女性ヴォーカリストZaraの圧倒的存在感。より一層の土着性、フォーク色を鮮明に浮かび上がらせた誇り高きアルメニアン・エスニック・プログレッシヴ・ロック・バンド、DOGMAのセカンド・アルバム。

2013年発表。
スリップケース。
CD-R仕様。

収録曲
01.Ավազե հովազ / Sand Leopard 4:03
02.Ո՞վ է տեսել / Who Has Seen? 4:38
03.Ու՞մ համար ես / Who are you for? 5:37
04.Սպասում / Expectation 4:40
05.Melancholy 4:47
06.Black 5:01
07.Հորի լորո / Hori Loro 3:51
08.Ուրախացան / Joyspread 4:10
09.Argument 5:10
10.Falling 4:12

アジアのバンドの音源が聴けるネットラジオ
「Cinta KecilのASIAN ROCK RISING vol.82」にて紹介。
YouTubeでの視聴は こちら

以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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アルメニア共和国。その国はあまりにも日本から遠く、イメージは湧きづらいかもしれない。酒好きにはブランデー(またはコニャック)が有名だが、あとは、アルメニア系アメリカ人のSerj Tankian。ドラマーにはシンバル・メーカーZildjianがトルコにいたアルメニア人発祥ということで何となく馴染みはあるかもしれない。バンドでいえば、OAKSENHAMやNOR DAR辺りもマニアには知られているが、DOGMAというエスニック・プログレッシヴ・バンドもアルメニアというイメージと強く結びつけてもらいたい。

以前、こちらでもデビュー作を紹介したが、2013年末にセカンド・アルバムとなる『Under Dogma』を発表したので、再度触れておく。

バンドは元々、MDPとして90年代初頭から17年間活動していたギタリストのHeno GrigoryanとベーシストのVardan Grigoryanの二人がMDP解散後、エスニック・フォークの要素をより鮮明に取り入れた曲を演奏する事を目的としてDOGMAを立ち上げる。そこに当時は無名といってもいいZara Gevorgyanという女性ヴォーカルと、ARAMAZDやTITANというバンドでドラムを叩いていたDerik Vardumyanが加わり、2008年にスタート。

当時、まだMDPは解散したばかりだったが、友人や関係者を集め、サプライズ的にDOGMAという新たなバンドを披露した。民族色を強く打ち出したメロディとヘヴィさの融合。さらにZaraの神秘的な佇まいと魅惑のパフォーマンスに集まったものたちは度肝を抜かれたという。MDP自体も独立後のロック・シーンにおいて活躍していたバンドではあるが、より土着性、国民性を意識したDOGMAは、この日からまさに“アルメニア・ロック”界の重要なバンドとなるのである。

2009年末にバンドは待望の『Ethnic-Methnic』というデビュー・アルバムを発表。大手流通会社は通していないものの、近隣のヨーロッパはもちろんのこと、アメリカ、カナダ、そしてここ日本からも反応があり、バンド自身も驚いたようだが、その後、ZaraはJETHRO TULLのIan Andersonのステージに招待されて歌を披露したり、ドイツのWave Gotik Treffenというフェスティヴァルへも参加。さらにはMITメディアラボのTod Machoverが指揮を執る『A to A:The World in Harmony』というミュージカル・プロジェクトでも演奏しており、その活動はなかなかに順調なようだ。

しかしながら、今回の『Under Dogma』が発表されるまで4年とは少々長かった。何かあったのではないかと思ってその理由を聞いてみたが、大きな事件があったわけでもなかった。実は、彼らは自分たちのスタジオを持っており、自分たち以外のミュージシャンにも解放しているのだが、アルメニアで開催されるDEEP PURPLE、URIAH HEEPなどを始めとする多くの大物ミュージシャンのコンサートの主催も務めていて忙しかったというのがその主な理由のようだ。実際、アルバムを制作するだけの曲は十分にあったので、ファースト・アルバムを発表後、すぐにレコーディングを開始したものの、何度も中断する羽目になってしまい、結局は最初からやり直す事にしたらしい。

確かにアルバムの間隔は空いてしまったが、そのことが生み出した良い面は大きい。その間にステージやリハーサルを通して幾度となく演奏することによって、楽曲をより理解し自分たちのものにした上でレコーディングに挑むことが出来たのだから。

その結果が『Under Dogma』にある。 各パート、詰める所は詰め、整理する所は整理されているようで、一切の無駄なくまとまっていると思うが、熟れた感じが一番顕著なのはZaraの歌だろう。このバンドをDOGMAたらしめているのは、すべての楽曲を書いているギタリストのHenoであることはまず疑う余地がない。しかし、このDOGMAというバンド、現在の誰が欠けてもDOGMAでなくなってしまう堅固さと危うさが共存しており、特にZaraの歌なくしてはHenoの楽曲も今程の輝きは得られないだろう。そのZaraの表現力。つまり、息づかいや声色を含めた部分の、そして神秘性を保った迫力。より柔軟により深いものとなっているのは彼女が母親になったことも関係がないわけでもないだろうが、この才能はアルメニア・ロック・シーンきっての逸材であることは間違いない。

楽曲自体はすでに以前から準備されていた曲であるし、その曲が書かれた方法もファースト・アルバムに収録されていたものと変わらないということだが、今回のポイントはよりエスニック/フォーク要素を色濃く鮮明に浮き上がらせている点。エスニック美を極めたかのような「Hori-Loro」や「Joyspread」などはヘヴィな要素はなく、アコースティックで完全にフォーク/トラッドの様相を呈している。そして、もうひとつはキーボードの導入が新たな要素として挙げられる。しかし、それは決して派手なものではなくダークなアンビエント要素として極さりげなく曲の中に溶け込む形だ。

すべての楽曲で咲き乱れるアルメニア独自のメロディではあるのだが、陽気になるようなものは少なく、全体的に影を背負っている。これは決して平穏な時代が長かった国ではないからこその薄暗さと重さと、そこはかとなく漂う冷めた感じなのか、それとも…。矛盾しているようだが、楽曲は起伏に富んでいるし、Zaraの歌には心が通い、演奏には血が通っている。それに誤解してもらっては困るが、DOGMAの音楽は絶望的なものではない。荒廃した中に生命の温もり、闇の中に光がいつも宿っている。そこに気付くかどうかで印象はだいぶ異なったものになるだろう。

今回バンドは、アルバムから「Melancholy」という曲をビデオ・クリップに選んでいる。この曲はちょうど、東日本大震災が起こった時に書いていたもので、直接は何の関係もないらしいが、メンバーはその出来事に深い衝撃を受けたことによって、その時の気分がかなり楽曲に反映されているという。モノクロでシンプルに撮影されたその作品はタイトル通り、メランコリーそのもので、余計な映像ギミックを使っていない分、ストレートにその表現しようとするところが視聴者に伝わって来る。一度は観てみるだけの価値のあるビデオ・クリップだ。

アルメニアには彼ら以外にもプログレ・バンドや、メタル・バンドは存在しているが、DOGMAの登場によって、より母国の特色を打ち出したメロディ、さらにはアルメニア語を使用するロック/メタル・バンドが増えたという。DOGMAはアルメニアのロック・シーンを支え、これまでの既成概念や定説、教義を飲み込み新たなる視点と道を提示している重要なバンドのひとつといえる。
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サンプル動画は、図らずも東日本大震災の出来事に衝撃を受けた当時のメンバーのムードが反映されているという「Melancholy」のPV。

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