YE RAM "성(Castle)"

YE RAM "성(Castle)"

販売価格: 2,400円(税込)

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商品詳細

都会では誰もがちぐはぐでもつれたまま
月や星よりも輝くのはネオンライト
偽りの光は信じるべき道標と夢をかき消す
闇夜が寂寥の影を滲ませながら落ちてくる
目を 耳を 鼻を 削ぎ落とす独断と偏見の刃
怯えて痩せ細った心は聖域へと駆け込む
ここは世界でいちばん安全
自分だけの秘密の場所 
じっとこのまま……ひとり
もっとこのまま……一人
ずっとこのまま……独り
きっとこのまま……孤独
夢見た世界はここだったの?
幼かった頃にしていたように
想像旅行に出かけよう
一番大好きで一番大切な瞬間を過去から未来へと駆け巡る
いっぱいの笑顔と勇気を思い出してもういちど外へと飛び出そう
本当の自分を
本当の自由を
仲間たちと共に手にするために


山奥にそっと湧き出でる小さな泉のような澄んだ心から流れるメロディは、水面にゆらめく陽の光のように奥ゆかしく煌めき、透き通った夜の空気のように静寂を響かせる。韓国の女性フォーク系シンガーソングライターYe Ram(イェラム)。それは夜のしじまの嘆息。

2017年に『새벽항해(暁の航海)』で世界という大海原へと出航し、2019年の『바다넘어(海越え)』であらゆる国の人々との出会いを経験。
そして今作『성(Castle)』は……
ソウルという都会に出てきた彼女が一人暮らしをしながら社会を見つめ、悩み、考え、自己のアイデンティティと向き合い、音楽的にも精神的にも大きな歩みを進めることとなった1stフル・アルバム。

すべての垣根を超えて自然も人々も心地良く繋がれることを願う彼女の歌は風に乗って海を渡ってどこまでも伝播してゆくはず。

2020年発表

収録曲
01.바다넘어(Over The Sea/海超え) 5:39
02.그녀가 춤을 추네(She’s Dancing) 2:13
03.꿈에 택시를 타(Take A Taxi In My Dream) 5:42
04.서울의 밤(Night In Seoul) 4:19
05.붉은꽃(Red Flowers) 3:49
06.같은 외로움이야(Same Loneliness) 5:54
07.여행(Take A Trip) 3:47
08.한 낮에 뜬 달(A Moon In The Middle Of The Day) 4:36
09.말할 수 없는 애인(Secret Lover) 4:54
10.밤으로(By Night) 3:08
11.성(Castle) 5:16


2022年1月〜2月にかけてのインタヴュー。

意味が通りやすいよう、部分的に修正した箇所もありますが、基本的にはYe Ramさん自身による日本語の解答です。

ARR:まずは、どのような経緯でアコースティック・ギターを持って歌うようになったのかを教えていただけますか。過去のインタヴューを参照すると中学生の時に始めたようですね。自分で曲を作るようになったきっかけなども教えてください。

Ye Ram:中学生の頃、ギター部の先輩たちがすごくかっこ良く見えました。それでギター教室に通うことにしたのですが、なにもわからなかった私はクラシック・ギターから始めました。けど、あの頃はクラシック・ギターよりアコースティック・ギターのほうがもっとかっこ良く見えたんです(笑)(今はクラシック・ギターもすごく好きなんですけど……笑)そんな理由で始めたアコースティック・ギターですが、どんどんレベルが高くなり、難しくなりました。そのため、自分が演奏しやすいコードで歌を歌いながら曲を作ったのが始まりです。大した理由があって曲を作り始めたわけではありませんが、音楽を作ったり友達の前でライヴしたりと、あの頃、音楽と一緒だった時間はすごく楽しい記憶として私の中に残っています。あと、曲を作って歌を歌うことは言葉の表現がもっと広がっていくんだと深く感じ、音楽が人に伝える力を感じました。

ARR:今のお話からすると、とても良いスタートを切ったようですが、過去のインタヴューでは高校生の時に音楽をやめた時期があると言っていましたね。

Ye Ram:私の場合、高校はもっと真剣に未来を考える時期だったんです。それで楽しくしやってきた音楽を大学の受験に向けて勉強し始めることにしました。あの頃はそんな方法しかわからなかったのです。そうして1年後、私が私自身にプレッシャーをかけていることに気付きました。あと、受験に向けての音楽の勉強は役に立ったんですけど、自分には合わない気分でした。音楽以外にもたくさんの可能性があることを気づき、好きなことがいっぱいだった私は言語や文学にも興味を持ちました。でも、こんなふうに音楽をやめるのはもったいないと思ってデモ・アルバムを作ってからやめようと思いました。それで1年をかけて、アルバムの作り方とかあんまりわからないままの状態でLogic Pro(音楽制作ソフト)とイヤホンのマイクだけで作ったアルバムが生まれました(このデモCDは公式発売されていません)。そうやって挑戦して結果を出せたことがきっかけとなって、やっぱり音楽を作って歌うことは楽しくてずっと続けたいと思いました。あと、友達や先生、両親に説得力を見せることもできました。

ARR:楽器の演奏を始めてもすべての人が音楽を続けていけるわけではありませんし、自分の作品を世の中に発表できるとも限りません。しかし、Ye Ramさんは悩んだあげく、音楽を使って自由に自分の可能性を表現することを決意しました。そして20歳の時、2017年5月15日に5曲入りEP『새벽항해(暁の航海)』をリリースします。タイトル通り、まさに大海に乗り出すような大冒険だったことでしょう。この作品にはどのような気持ちを込めましたか。また、反応はどのようなものでしたか。

Ye Ram:『새벽항해(暁の航海)』は先程話した将来の不安や悩みを持っている自分と、一歩踏み出して前に向かって進みたいという意志を込めたアルバムです。将来の不安とかは特定の年齢にかぎらず、みんなが持っている事だと思いました。それでそんな気持ちをシェアしてお互いの力になるようにと。反応ですが、声や歌詞にも注目してくださり、アンダーグラウンドの中でさらに名前を認知させることができました。新しいファンたちとの出会いにも繋がった感じでした。私の中では公式に音楽活動を一歩始めた気分でした。

ARR:2017年は『새벽항해(暁の航海)』をリリースしただけではなく、日本で開催された<東アジア地球市民村>に参加しています。また、『새 민중음악 선곡집 - 연대의 노래(新しい民衆音楽選曲集 - 連帯の歌 / New Protest Songs - The Solitary Song)』というコンピレーション・アルバムにも参加しています。この作品は星州郡韶成里にTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)が配備されることへの抗議運動のひとつですね。さらに2019年には『섬의노래(島の歌)』というコンピレーション・アルバムにも参加しています。こちらは、多くの観光客が訪れる済州島に第2空港を建設するという計画に抗議する運動のひとつで、環境破壊を危惧したもの。そして2021年には『We Are In Green』というコンピレーション・アルバムに参加していて、私には詳細がわかりませんが、江原道平昌郡で行われた環境活動と関連がある作品ですよね。これらのことからYe Ramさんの人物像がうっすらと見えてきますが、実際、Ye Ramさんはどのような意識を持って毎日を生活をしているのでしょう。また、音楽を通じてどのような活動をしていきたいのでしょうか。音楽はどのような力を持っているとお考えですか。

Ye Ram:音楽は何かのストーリーを強力に伝える力があります。私自身もつらい時や幸せな時に応援と喜び、今を充実して過ごすいろんな力を音楽からもらいました。みんなが一緒に住んでいるこの世界にほんの少しでも役に立つ良い方法は何かを探し続けています。私は個人的なストーリーでもみんなに繋がっていると思い、お互い力になっていくことを音楽に込めたいと思います。特に今はコロナウイルスのせいで、みんな難しい時期じゃないですか。地球と人々が仲良く生きる力と勇気のことを最近考えています。まだ私は明確な答えを出すことはできないし、未熟者ですが、悩みを続けていくことと万物から学ぶことを忘れずに生きたいです。

ARR:話しを続ける前に、ひとつ聞き忘れていたことを。Ye Ramという名前は本名ではありませんね。なぜ、Ye Ram(예람 / 藝蘫)にしたのですか。

Ye Ram:面白い理由ではないですが(笑)説明すると、私はフリースクールに小学生から通いまして、私が通った学校での文化で18歳になると成人式を行います(韓国全体的には成人式の文化が特にないです)。そこで자(ザ)と言う新しい名前を作って、自分の本名の前につけます。名前にはどんな思いを持って生きるかを考えてそれぞれの意味を込めます。それで私は芸術の“藝”(私が本来持っている才能)、水が奇麗という意味の“蘫”で、私が本来持っている才能を奇麗な水のように向き合ってみんなとシェアしたいという思いを込めた名前です。

ARR:雅名というか字(あざな)のような“자”は、“チャ”や“ジャ”ではなく“ザ”と読む方が近い発音になるのでしょうか。“자(ザ)”についてもう少し教えていただけますか。

Ye Ram:発音は“ザ”がいちばん近いと私は思っています。もっと説明すると、韓国の昔の名前の呼び方の文化です。昔は本名を大切に思い、直接呼ばずに「冠禮(冠礼)」という昔の成人式後、新しく名前を作って、その名前で呼ぶ文化がありました。そこからアイデアを得て私が通ったフリースクールでは「冠禮(冠礼)」を私たちの方式で行いました。その方式はそれぞれゆっくり考える時間を持って、これからどんな人になりたいかを名前に込めます。ですから書く時は名前が長くなります。例えば、私の場合は“예람(Ye Ram)”という“자(ザ)”に“정서현(チョン・ソヒョン)”という本名でで예람 정서현となりますが、呼ぶ時は“자(ザ)”の部分の“예람(Ye Ram)”だけで呼ぶことができます。多分昔は目上の人から“자(ザ)”をつけてもらうことになっていたはずですが、学校では自分自身がつけました。

ARR:2019年にはライヴもできるカフェ작은물のコンピレーション・アルバム『작은물 컴필레이션』に参加していますが、今回は9月6日にリリースされたシングル『바다넘어 (Umikoe/海越え)』に注目してみましょう。このアートワークはちょっと不思議な絵ですね。

Ye Ram:アートワークには魚たちが森を泳ぐ姿が描かれています。「바다넘어 (Umikoe/海越え)」という曲の歌詞に海と森が登場します。森は迷っている自分、海は前に向かう自分、と比喩的に使っていて、森と海を一つの空間にしてこの曲を表現したかったのです。魚たちは多分いろんなところを旅して行く自分じゃないかなと。

ARR:この作品には、「바다넘어 (Umikoe/海越え)」「비밀 (Himitsu/秘密)」の2曲が収録されています。まず最初に驚いたのは日本語で歌う部分が非常に多いことです。「바다넘어 (海越え)」は30%ほど、「비밀 (Himitsu/秘密)」に関しては100%日本語です。しかもかなり素晴らしい日本語詩になっていると思います。日本語はいつから学んでいたのですか。

Ye Ram:日本語を本格的に学んだのは高校一年生の時からです。中学生の頃から日本のアニメが好きでよく見ていましたので興味がありました。あと、日本へ行って友達ができたことでより深く学ぶことができました。

ARR:「바다넘어 (Umikoe/海越え)」の歌詞から想像するに、Ye Ramさんの「気持ちのこもった歌が海を越えて遠くの国の人々まで届くように」という意味があるのではないかと解釈していますが、いかがでしょう。ここでは日本語が使用されているので、まずは日本が第一目標ということになるのでしょうか。

Ye Ram:「바다넘어 (Umikoe/海越え)」は解釈していただいた意味も含めて、国籍や性別、年齢なども関係なく、みんなが友達になれるという気持ちで作りました。そして、日本が第一目標というより、この歌に込めた気持ちを私がいちばん上手く伝えることができる言語で表現したのです。あとこの曲は<東アジア地球市民村>で東アジアの友達と会って話し合った後、韓国に戻って書いた曲です。東アジアの中で、できる言語が韓国語以外は日本語しかありませんでした。今後は中国語も習いたいと思っています。実は私は言語自体に興味があって、今は韓国語と少しの日本語しかできないですが、いつかいろんな国の言語を学びたいです。言語の美しさはその国の文化でしか表現できない言葉があるからです。いろんな言葉で思いを伝えたいです。

ARR:さらにこの曲は日本語と韓国語で交互に歌われますが、ほとんど同じ意味の歌詞だと思います。それでも言語が違えば、そこに含まれる意味は多少異なるのでしょうか。

Ye Ram:両言語の歌詞はほとんど同じ意味で書いたんですが、音とかを合わす過程で少しだけ違います。韓国語は敬語ですが、日本語はそうじゃないとか、日本語で理解やすい言葉にちょっと表現を柔らかくしたくらいで伝えている意味はそんなに変わらないです。

ARR:一方、「비밀 (Himitsu/秘密)」に関してはきっと教えてくれないでしょうが、その歌詞は抽象的ですね。見方によっては失恋の歌のようにも解釈できますが……。なぜ、これを日本語で歌うことにしたのでしょうか。

Ye Ram:「비밀 (Himitsu/秘密)」は今説明した言語の美しさと繋がっています。これは恋愛の話じゃないですが、タイトルが秘密なのでもっと自由に解析して聴いてほしいです。一つだけ言うと、私にはちょっと切ない気分の曲です。何かの秘密を持っていたり何かの秘密を知りたくなかったりする場合、傷つきたくないという気持ちがあると思います。また、歌詞には言葉遊びが隠されています。私には“雪”という言葉は“勇気”にも聞こえるし、“風”の韓国語바램(パラム)は一つの発音で二つの意味を持っている単語で“風”そのものと“願い”と言う意味もあります。この「비밀 (Himitsu/秘密)」という曲を歌う気持ちは日本語でしか表現できないものだと思います。

ARR:この2曲に代表されるように、Ye Ramさんの曲は叙情的でとても透明かつ繊細です。そして寂しい気持ちと優しい気持ちの両方の感情を呼び起こします。是非、Ye Ramさんの曲がどのようなところから湧いて出てくるのか、その源泉を知りたいと思います。過去のインタヴューを参照すると、정새난슬(JeongSaeNanSeul)、きのこ帝国、Laura Marling、青葉市子、김사월(Kim Sawol)、애리(Airy)、 천미지(Cheon Miji)、키라라(Kirara)、 도마(Doma)、쓰다(Xeuda)、 윤숭(Yoonsung)、정우(Jungwoo)、장명선(Jang Myung Sun)などの名前を挙げていましたが、今一度、Ye Ramさんが影響を受けた音楽、ミュージシャン、作家、映画などを教えてください。

Ye Ram:実は今挙がった名前だけじゃなく、一緒に音楽を続けているミュージシャンの同僚にはいつもいろんな影響を与えてもらっています。また、小さい頃に私が最初に憧れたミュージシャンはテイラー・スウィフト(Taylor Swift)です。音楽のジャンル的には本当にいろんなミュージシャンに影響を受けています。あんまりジャンルにこだわりなく音楽を聴いています。映画はジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)監督の作品がとても好きです。あと、音楽が素晴らしい映画や想像力が豊かな映画などが好きです。

ARR:曲作りのときにはどんなことを想像しているのですか。

Ye Ram:曲を作る時の気持ちは曲によてちょっとづつ違うと思いますけど、たいてい自分自身を応援する気持ちで作っていると思います。内容に関係なく歌う後にはスッキリした気分をよく感じます。私には積もっている何らかの感情を引出す過程と同じだと感じます。

ARR:それでは2020年にリリースした1stフルアルバム『성(Castle)』に話しを移しましょう。今回のアートワークもファンタジックでどこか不思議な雰囲気があります。夜のような暗い室内にチョウのようなものが飛んでいたり、カラスや怪しげな植物、きのこなどが描かれています。少しサイケデリックな感じもしますが、これはタイトルにもなった城の中の様子ですか。

Ye Ram:はい。タイトル曲の「성(Castle)」に登場する魔女の城にある部屋の一つです。オブジェはカラス以外はちょっと異世界のもののようにしたかったです。また、飛んでいるのはチョウではなくてガ(蛾)です。

ARR:過去のインタヴューを参照すると、『성(Castle)』というアルバムは「自分という存在を探りながら、自分だけの世界(城/Castle)から出てくる物語」という説明をしていたように思います。特に、アルバムのクライマックスであり、ビデオ制作もされたタイトル・トラック「성(Castle)」では退廃した室内から外に出て踊りだす様子が描かれています。ただ、一緒に戯れる白い布をかぶった幽霊のような存在たちが謎ですが。

Ye Ram:まず、『새벽항해(暁の航海)』で世界に一歩踏み出して、『바다넘어(Umikoe/海越え)』で世界の人々との出会いから、『성(Castle)』に着いて自分のアイデンティティと向き合うという全体的な流れがあります。“성(Castle)”には“城”と“性”という二つの意味があります。韓国ではこの単語の発音は同じです。魔女、または少女と呼ばれるエゴ的で二分法的な社会の視線から自分の居場所がないと感じました。ただ単にどこかへ飛び出した話じゃなくて内面にあったアイデンティティの解放を願う気持ちがこの曲に描かれています。ですから城は一人だけの寂しい城なのです。城の扉を開けて外の世界に出るのはミュージック・ビデオの内容と繋がっています。そこでは寂しい城から出て幽霊のように見える者たちと踊りながら自由な世界へ向かって行く場面があります(ここでの幽霊はその言葉のままの幽霊を意味するのではなく、性別や国籍など何も規定されていないということ)。この場面は、「本来の私の姿のままこの世界で生きて行くことこそ、私のそのままを受け入れていない世界に抵抗することだ」と話しています。歌では寂しい自分しか歌ってないですけど、その続きがミュージック・ビデオで描かれています。曲の順番はそのアイデンティティの物語の中で、女性のミュージシャンとして活動しながら生きてきた多様な経験と悩みの中で生まれた曲たちがアルバム全体に流れています。

ARR:성(Castle)の物語について少し整理させてください。魔女、そして少女と呼ばれる人物が主人公であり、성(Castle)はその彼女の居場所(世界)というのが前提にあるわけですね。そしてその主人公はひょっとしてYe Ramさん自身で、女性であるからという(性/ジェンダー的な)理由で偏見や差別の眼差しで見られた経験があって「自分の居場所がないと感じた」ことがあるからこのような物語が出来上がったのでしょうか。

Ye Ram:別の主人公があるより、自分の話がアルバム全体にあると理解する方がもっと内容に近いと思います。社会の視線から自由になるため、一人になれる自由な場所として比喩的に성(Castle)があります。けれどもその성(Castle)の中で一人でいることはとても寂しいことです。歌詞の中に登場する魔女と少女は同一の人物ですが、権力者が女性を見る場合、都合次第で魔女として扱われることもあれば、少女として扱われることもあるという不当な認識についてです。そして歌詞を越えてもっと全体的に私が話したいことは、年齢や国籍、性別(LGBTQ)、障害者などの差別を受けている人たち、不当に人が死ぬとか不当な立場で働いたりすることは、社会の差別的なシステムと誤った認識によって起きるということ。差別は遠い話ではなく、私の友達、家族、もしくは私が受けるかもしれません。私を含めてそういうシステムや認識によって周りの人たちが実際に不当な差別を日常的に受けています。差別がない社会を望む気持ちでこの歌を歌い、そんな世界の切なさと寂しい気持ちを歌っています。それで魔女と少女はその差別の一部として歌詞になったのです。성(Castle)は差別がないプライベートなところです。一人の人間として自由にいられる象徴的な所です。でも、一人じゃ寂しいだけだから差別がない世界を望むのです。歌詞にはない内容ですが説明をもうちょっと追加すると、こんな世界でも私は私のまま社会に負けず自由に生きるという意志を込めて歌ってます。

ARR:なるほど。アルバムのクライマックスであり、タイトルになっている「성(Castle)」については良くわかりました。先ほど、「曲の順番はそのアイデンティティの物語の中で、女性のミュージシャンとして活動しながら生きている多様な経験と悩みの中で生まれた曲たちがアルバム全体に流れています」と教えてくれましたね。その多様な経験と悩みは1曲目の「바다넘어(Over The Sea /海越え)」からどのように変化して最終的に「성(Castle)」へと至るのでしょうか。

Ye Ram:1曲目「바다넘어(Over The Sea/海越え)」は世界に踏み出す一歩として1番目にしました。2曲目「그녀가 춤을 추네(She’s Dancing)」 は夢語りを込めた歌です。夢の中で愛しい人との出会いが描かれています。3曲目「꿈에 택시를 타(Take A Taxi In My Dream)」が3番目になる理由は、アルバム・タイトルの曲をよく3番目に持ってくる形式を見て、そうしてみました。ですからこの曲はサブ・タイトルと言えるもの。夜遅くタクシーを乗るのが怖くって夢の中で楽しくタクシーを乗ったらという想像とこんな怖い夜の場面でも私は死なないという意志を込めています。4曲目「서울의 밤(Night In Seoul)」はソウルで一人暮らしをしながら感じた「星が見えない」「夜にも工場みたいな都市の明かり」とかの感想についての都会暮らしの寂しさを歌っています。5曲目「붉은꽃(Red Flowers)」は話がよく通じない二つの何かの形を赤い花という、ちょっと抽象的な表現で歌っています。6曲目「같은 외로움이야(Same Loneliness)」 は一人だけじゃなく、誰にも感じられる寂しさについての曲です。7曲目「여행(Take A Trip)」は子供たちだけではなく、みんなの童謡として作った曲で、想像力とピュアな子供の頃の視線を大人になっても持っていきたいという曲です。8曲目「한 낮에 뜬 달(A Moon In The Middle Of The Day)」は日本の漫画『海街diary』第2巻のタイトル(『昼の月』)と同じです。この漫画からインスピレーションを得て、失ってしまった気持ちや、いつもそばにいたけど気づかなかった大切なことに関する曲です。9曲目「말할 수 없는 애인(Secret Lover)」は恋愛の話。不安定な恋愛でお互い良くない姿を見せてしまう物語を込めています。10曲目「밤으로(By Night)」はあの世に行く道を童話のよう語っています。そして「성(Castle)」で最後になります!

ARR:「바다넘어(Over The Sea/海越え)」についてですが、2019年のシングルの時には伝統楽器カヤグム(伽耶琴)が登場していましたが、このアルバムではエレクトリック・ギターが代わりを務めてますね。

Ye Ram:「바다넘어(Over The Sea/海越え)」は、もともとビオラとエレクトリック・ギターで作った曲です。2019年当時はカヤグムとの編曲もしてみたかったのでカヤグムとビオラでしました。そして『성(Castle)』ではオリジナル・ヴァージョンともいえる編曲で。特別の理由はありません。私は一つの曲でもいろんな形で聞かせることが音楽を味わえるすごく楽しい方法だと思っています。また、音楽のいろんな色と側面を伝えることもできます。

ARR:過去にパンクにも挑戦したいとお話していたことがあると思います。それと関係があるかどうかはわかりませんが、2019年にはクラスト・パンクのDISTRUGGLEの『DEMOnstration』リリース・パーティに参加して演奏していたので驚きました。Ye Ramさんの演奏する音楽は一般的にはフォークと言われることが多いでしょう。または、環境保護や差別をはじめとするある種の抗議に関連した曲も作っていることからプロテスト・フォークと言われることもあるかもしれません。また、『We Are』ではロックよりの曲をバンド形態で演奏しています。今後はフォークという範疇から外れるような音楽に挑戦することも考えていますか。また、ご自身の音楽性をどのように捉えていますか。

Ye Ram:DISTRUGGLEのパンク・パーティでは、ただフォーク・ミュージシャンとして参加しただけでジャンル的に特別な意味はないです。私には一つのジャンルを決めて音楽をすることは想像できません。これからもフォーク、ロック以外にもいろんなジャンルに挑戦してみたいです。今はフォークとロックをもっと磨き上げたいです。このような方向性になったのは、特定の音楽やミュージシャンに強く影響を受けて音楽を始めた訳ではなく、歌を作りながら音楽の世界をどんどん知って、歌いながら学び続けたからかも知りません。ただ今自分がいちばん良くできることをやり続けているのです。私はよく、「一緒に生きていくことについて悩みながら歌っていくシンガーソングライター」だと自分自身を紹介しています。

未熟な日本語ですが、最後まで読んでいただいた方々、本当にありがとうございます。

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