ZeitGeistS "ZeitGeistS"

ZeitGeistS "ZeitGeistS"

販売価格: 1,800円(税込)

商品詳細

暗黒魔術の幻想
その只中で悦楽に酔いしれろ!

タイのバンコクを拠点とするインストゥルメンタル・ヘヴィ・サイケ/ドゥーム・バンドZeitGeistS。

アマチュアのジャズ・ミュージシャンが中心となって結成されてはいるが、このZeitGeistSの手掛かりとなるのは“60年代のサイケデリック・ロック”と“70年代のプログレッシヴ・ロック”であり、そこがメンバー全員の共通項となる。

BLACK SABBATHのようなダークなリフ。NEUROSISのようなのしかかるヘヴィさ。SOFT MACHINE、KING CRIMSON、MAHAVISHNU ORCHESTRA、John Coltrane、Ornette Colemanのようなジャズ要素。THE BEATLESやPINK FLOYDが持っていたサイケ要素。URIAH HEEPのような邪悪なオルガン。それらがどんよりとした暗黒のベールを纏って濁流のように襲いかかってくるのがこのデビューEP。

極めてヤバし。

200枚限定
2021年発表

収録曲
1.Shatterd Dreams 06:48  
2.Juvenile 04:06  
3.Ma Kyal Sin 01:55
4.Monarch’s Epitaph (Sleep) 06:20  
5.Conceal & Obscure 06:50

2023年5月に行なったZeitGeistSとのインタヴュー

メンバー
Aum Subhamitra :ギター
Nopbhorn Wongpratum:ベース、ソングライター
Wasin Wainiya:キーボード
Thot Panomkwan:ドラム

今回、回答していただいたのはNopbhorn Wongpratumさん。

ARR:ZeitGeistSを聴いているとBLACK SABBATHのようなリフやNEUROSISのようなヘヴィさ、さらにはSOFT MACHINE、ASH RA TEMPEL、URIAH HEEP、MAHAVISHNU ORCHESTRAのような感触もところどころに感じますし、全体的には70年代のダークなシンフォニック・プログレや黒魔術的で邪悪な雰囲気もまとっています。このようなサイケでドゥーミーなスタイルはタイのロック・シーンでは比較的珍しい部類じゃないでしょうか。どのようなきっかけでこのバンドを結成することになりましたか。また、このデビューEPを制作するにあたって影響を受けたバンドがあれば教えてください。

ZeitGeistS:その通り!今名前が挙がったすべてのバンドから影響を受けている。俺たちはメタル、ジャズ、伝統音楽/民族音楽などさまざまな音楽的背景を持って育ってきたけど、全員が夢中になれるジャンルといえば60年代のサイケデリック・ロックと 70年代のプログレッシヴ・ロック (シンフォニック・プログレ、折衷系プログレ、カンタベリー、クラウト・ロック)なんだ。で、『ZeitGeistS』を制作するにあたってインスピレーションを受けたのは、と聞かれたら、間違いなくBLACK SABBATHだね!あとは初期のTHE BEATLES、初期のPINK FLOYD、KING CRIMSON、MAHAVISHNU ORCHESTRA、John Coltrane、Ornette Colemanなんかもそうだね。
バンドの始まりは2015年に遡る。Aumと俺(Nopbhorn W.)は音楽フェスで出会い、政治について熱く語ったんだ。当時の政治情勢は、“PDRC:People's Democratic Reform Committee”や“PCAD:People’s Committee for Absolute Democracy with the King as Head of State”という右翼運動が台頭し、タイで最新のクーデターを起こしていた時期。彼らがおこなったのは、多数決で選ばれた政府を転覆させることであり、一部のエリートによって支援されていた。その結果、中流階級と一般大衆(貧困層)の間に大きな亀裂が生じることとなる。また、アート・コミュニティの人々は、ほとんどが一般大衆の立場に立つことなく、90%のアーティスト(あらゆるジャンルの)が保守的な右翼の政治を支持していたんだ。で、フェスでの出会いの時、俺たちはアマチュアのジャズ・ミュージシャンだったけど、「ジャズを通じて、左翼政治や民主主義、そして反独裁政治を訴えるバンドを作りたい!(タイのジャズ・ミュージシャンはエリートでブルジョワが多いのさ!)」というアイデアが湧いて、The Zeitgeisticというバンド(2018年にZeitGeistSへと改定)を結成した。当初は6〜7人のメンバーがいて、フュージョン・ジャズにワールド・ミュージックを混ぜたような演奏をしていた。たとえば、Bob Marley、John Lennon、Bob Dylanなどのプロテスト・ソングを再アレンジして、アムネスティ、UNHCR、Playing for Changeなどの進歩的な団体が主催するイベントや、自分たちが企画する路上ライヴで演奏していたんだ。

ARR:そうして集まったメンバーですが、多少の変化もあったようで、現在は以下の4名ですね。
ギター:Aum Subhamitra
キーボード、サンプル:Wasin Wainiya
ベース:Nopbhorn Wongpratum(Kim)
ドラム:Thot Panomkwan
パッと見たところドラマーはかなり経験を積んでいるようですし、Wasinは元WILLSHARE、元SLOW SHUTTERで現在はHOPE THE FLOWERSにも在籍してますよね。この流れからみて彼はポストロック系の人物だと思っていたのですが、ZeitGeistSのような音楽でも活躍しているとは驚きです。

ZeitGeistS:Wasinは2020年にバンドに加入した。Arm Wainiyaとしてソロ・アルバムもリリースしていて、ポストロック出身でありながらデス/ブラック・メタルからJ-POP(坂本龍一の熱狂的なファンでもある!)まで幅広く聴く。最初に話したとおり、俺たちの合流点は70年代プログレだから、彼の好きなキーボーディストもそこ。それがZeitGeistSのデビュー作とか今後のフル・アルバムにつながっているんだ。例えば、Richard Wright、Keith Emerson、Chick Corea、あとはJoe Zawinulとかもね。Thot Panomkwanもバンドに加入したのは2020年。Elvin Jones、Tony Williams、Mitch Mitchell、John Bonham、Bill Wardから影響を受けている。彼のディスコグラフィーを全て紹介しようとしたら丸一日かかってしまうくらいだ!そこで一押しの傑作Pathomporn Pathomporn(通称Pry)のスタジオ・アルバムをお薦めする。

ARR:あのPryと演奏しているとは興味深いです。どのアルバムで叩いているのでしょうか。

ZeitGeistS:『เพื่อนของฉัน』『ปกเหลือง』『แสดงสด Acoustic Sessions』だね。実は、元ZeitGeistSのメンバーもさまざまな時期にPryと演奏しているんだよ。で、話の続きだけど、俺たち(NopbhornとAum)は、2015年以前にいくつかのアーティストやバンドでライブ/スタジオ・セッション・ミュージシャンをやっていた。そんな俺たちのサウンドを形作ったミュージシャンたちは、Jimi Hendricks、John McLaughlin、David Gilmour、Tommy Iommi、Paul McCartney、John Paul Jones、Chris Squire、Geezer Butler、Jaco Pastoriusなど。

ARR:“Zeitgeists”とはドイツ語でその時代を特徴づける傾向、“時代精神”ということですが、どのような意味を込めてバンド名に採用したのでしょうか。

ZeitGeistS:そうだね、英語だとSpirit of the Age。この用語はドイツの哲学者ゲオルク W. F. ヘーゲルによって一般に知られているけど、その意味は、哲学的にはかなり広くて複雑だからその点については省略する。というのも、バンド名に採用した理由はいたって単純なんだ。この言葉を分解すると、“Zeit”は英語で“Time”、“Geist”は“Spirit”または“Ghost”。
そこで思い出されるのが、大学時代から現在に至るまで、俺たちの人生に常に影響を与えてきたとある小説のこと。そのタイトルは『Ghost(ปีศาจ)』といって著者はセーニー・サオワポン(サウワポン)/เสนีย์ เสาวพงศ์/Seni Saowaphong(1918年7月12日〜2014年11月29日)。この中の有名な言葉の一つに「時間の変化を止めることはできない。時間の流れとともに、古いものが博物館に収められなければならない日が来る……私は、古い社会の考え方にまだ住んでいる人々を困惑させるために、“時間”が作り出した“幽霊”だ……私たちの世界は違うのだ。私の世界は庶民の世界であり、普通の人々の世界である」というものがある。つまり、“Ghosts of Time(時の亡霊)”とは、タイで活動家、革命家、あるいは自らの自由と権利を要求する人々を指す自己定義の言葉であり、この言葉は、我々の世代と新しい世代の成長、正義、自由-平等-友愛、未来の世代のためのより良い世界の解放を求める人々の感覚を与えるというわけ。

(注)Nopbhorn Wongpratumは『Ghost』という英語のタイトルで話してくれましたが、『妖魔』(岩城雄次郎訳)という邦題で1980年に日本でも出版されています。

ARR:アートワークに関してです。タイ伝統舞踊の踊り子が被るような仏塔を模した黄金の冠が被せられたドクロがとても不吉な雰囲気を醸し出しています。これにはどういう意味があるのでしょうか。

ZeitGeistS:その冠はサンスクリット語で“チャダ”もしくは“マクタ”と呼ばれているもの。チャダは、東南アジアの君主国で王冠として使われている頭飾りの一種なんだよ。タイに限らず南アジアを含む東南アジアの古典宮廷舞踊でも使われていて、インド発祥で男女を問わず使えることが分かった。これを選んだ理由は、君の言うとおり、非常に不吉な印象を与えるからだ!これをデザインしたのはPrakit Kobkijwattanaというアジアでもトップクラスの政治風刺アーティスト。彼はこれまで自分の作品について何の定義もしていないけど、タイ社会の背景を理解している人なら同様の解釈ができるかもしれない。例えば、「すべての神格化されて崇拝される者たちでも結局は死から逃れられないただの人間だった」「人々が長い間恐怖し崇拝してきた(いんちき)聖者や(偽)神こそが実は諸悪の根源だった」とかそういう感じにね。俺たちはこの王冠ドクロのキャラクターをIRON MAIDENにおけるエディやMEGADETHにおけるヴィック・ラトルヘッドといったシンボルのように“チャクリ(Chakri)”と呼ぶことにする!

ARR:これだけメッセージ性が強いのですから、なぜ歌詞で訴えずに音楽だけのインストゥルメンタルという形式をバンドが選んだのかが気になります。

ZeitGeistS:そう、そこなんだよ。最初の頃はカヴァーやアレンジし直した曲を演奏していたけど、すぐにオリジナル曲を書くようになり、音楽はよりロックの影響を受けたものになった。歌詞はNopbhornが英語で書き始めた。その多くは当時の政治的対立の中で書かれたものだけど、そうじゃなくても、過去に目撃した政治的出来事の経験や民衆運動からインスピレーションを受けた歌詞だった。そして、ジャズとロックの要素を取り入れたバンドは、カンタベリー系のようなサウンドで、タイではあまりポピュラーではなかったこのジャンルの音楽をスタートさせた。けれども、メンバーの中には音楽的な方向性に不満を持っている者もいたし、ヴォーカリストには政治的な見解がまったく異なったり、恐怖心から歌詞に関心を持てない者もいたよ(まぁ、それはわかるけど)。そこでヴォーカリストを配置せずにインストゥルメンタル形式へと変容したというわけ。

ARR:とはいえ、言いたいことは多いはず……

ZeitGeistS:もうおわかりだろうけど、タイでは政治的な問題や王政について話すこと、特にあらゆるメディアを通じてそれをおこなうことはタブー視されている。だから今回のような機会では、そのことについて積極的に話せる。以前、タイのメディアでインタビューを受けたことがあるけど、回答のほとんどが検閲され、まったく掲載されなかった。しかしながら、この状況に耐えられない人たちがいるのも事実で、彼らの中には刑務所行きや海外へ亡命、強制失踪、遺体で発見された者もいるんだよ。では、いったん話を戻そうか。2019年にAumとNopbhornを残してほかのメンバーが個人的な理由でZeitGeistSから脱退することになった。その時、俺たち二人が一番興味のあるジャンルに戻ることを決め、さらには歌詞を抜いた新素材で歩みを進めていくことを決断し、バンドは生まれ変わったんだ。その後、Tanutphong Tongnoom(マスロックJANUARYのドラマー)が加わり、自分たちの核となるコンテンツやアイデアをブレインストーミングし、最終的にEPでデビューする3曲を作り上げた。「Monarch's Epitaph」は最初のデモで、2020年からはキーボーディストにHOPE THE FLOWERSのWasin、ドラマーはTanutpongに代わってThotが参加した。

ARR:それぞれの曲についても聞いていいきましょう。1曲目の「Shattered Dream」は2010年4月から5月にかけての反独裁民主戦線の活動や事件を描いたものですね。

ZeitGeistS:そう、1976年10月6日の血の水曜日事件のような過去の出来事も含め、なきものにされた民主化運動、タイの軍事政権や絶対王政下での市民の死、俺たちが自由と権利のために立ち上がる、そのたびにそんな仕打ちを与えてくれる“神格化された者”のことを書いた。しかし、より良い世界への夢が一旦打ち砕かれたとしても......諦めない人々は常に存在するんだ。そこで次の曲「Juvenile」につながってゆく。この曲は、民主主義を目指し戦うために出てきたあらゆる時代の勇敢な若者たちに捧げられた。幾度となく撃滅させられたとしても、自由意志を持った若者は常に存在し、日ごとに増えていくだろう。

ARR:その「Juvenile」ですが、TONKLA(ต้นกล้า)の「เพลง หนุ่มสาวเสรี」(スチット・ウォンテート作)という曲が挿入されていますね。これは1973年10月14日の血の日曜日事件に関係しているのでしょうか。また、このバンドはプレーン・プア・チーウィット(生きるための歌)のはしりのようなバンドとして捉えることもできるのでしょうか。

ZeitGeistS:TONKLA (ต้นกล้า) はスチット・ウォンテートによって設立された合奏団。彼は同じ年 (1975 年) に1973年10月14日の民衆蜂起に触発された「หนุ่มสาวเสรี」という曲も作曲していて、1976年10月6日の血の水曜日事件直前に、学生やデモ参加者、活動家たちの間で流行ったんだ。この曲は「伝統的なタイ古典音楽」の形式を用いて作曲されている。「原始的なプレーン・プア・チーウィット」と呼ぶことはできるけど、音楽用語として厳密に表現するならば、今日理解されているようなプレーン・プア・チーウィットではないね。

ARR:「Ma Kyal Sin」という短い曲は、2021年にミャンマーで軍事クーデターに対するデモ中に亡くなった若い女性に捧げられた曲ですね。

ZeitGeistS:そう、これはミャンマーの民主化運動に敬意を表して彼女の名前を使用した。彼女は殉死者であり、抗議運動を取り締まる政権側の残忍さに対する抵抗の象徴だから。ビルマはタイよりも悲惨だけど、俺たちは皆、同じような運命にある。その日が来るまで、彼らとともに立ち上がり、戦っていくのさ。ちなみに、この曲にはパート2があって、現在制作中のフル・アルバムに収録される予定だよ。

ARR:EPを締めくくる少々異色な「Conceal & Obscure」ですが、ここには実際のデモの様子が挿入されているのでしょうか。

ZeitGeistS:過去から現在に至るまで、実際に起こった政治的な出来事をサンプリングしている。このトラックでは左右のスピーカーで異なった音楽が聞こえるんだけど、そこに隠されたメッセージを込めた。そしてアウトロでは、「…and unfortunately some people died」というフレーズがはっきりと聞き取れる。これは2010年4月と5月に起きたタイの赤シャツ弾圧事件の後、当時の首相アピシット・ウェーチャチーワが言った言葉だ。それ以来、彼は自分の言動の責任をとることはない。

ARR:これまでの話をまとめると、このEPには民主化を促すメッセージが込められているということでしょうか。

ZeitGeistS:どの曲も、民主化、自由、そしてすべてのファシズムや全体主義に反対するというメッセージを持っている。「Monarch's Epitaph」だけはまだ触れていないけれど、この曲で俺たちが何を伝えたいのかはおそらく理解できるはず……だからそう、まったくもって君の言うとおりだ。

ARR:やはりこのようなメッセージを伝えるにあたって、おどろおどろしくて破滅的な音楽はこのバンドにとって不可欠ということですね。

ZeitGeistS:そうなのさ!俺たちの音楽における恐ろしくてドゥーミーな要素は闇、邪悪、そして黒魔術の詠唱のようなもの。この国ではそういう部分はベールに包まれている。そのため国家が提示しようとした美しさやナイーヴさとは相反するんだけど、それってまさに幻想に酔いしれてるようで……どんなサイケデリックよりもシュールじゃないか!!!

ARR:そういえば「Conceal & Obscure」に参加しているChatmongkol Srinuan、Jinn Atom Chudpimai、Kalafya Brownといった人たちはジャズ・ミュージシャンなのでしょうか。

ZeitGeistS:彼らはこのバンドのオリジナル・ラインアップなんだよ。Kalafya (ドラム) は Nopbhorn W.と一緒にジャズ・バンドに所属していた。AumとChatmongkol (サックス) は別のバンドに所属していたけど、後にZeitGeistSで一緒になり、その後、Jinnがキーボーディストとして加入した。というわけで、「Conceal & Obscure」のサックス、ピアノ、ドラムはこのメンバーで演奏した。あとは、Dechmanoon Juntraというパーカッショニストがオリジナル・ラインアップとして在籍していたことを付け加えておく。公式なレコーディングをする前に脱退してしまったんだけどね。彼らとはまた一緒に仕事がしたい。いつだってそういう気持ちでいるんだ。

ARR:ありがとうございました。

ZeitGeistS:最後に、ZeitGeistSのファースト・フル・アルバムがもうすぐ発売されることを追加しておくよ。いつか日本のみんなに会って音楽を届けられることを願っている。Dōmo arigatō……


サンプルは「Shatterd Dreams」〜「Juvenile」

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