ATMOSFERA "Negeri Cinta"

ATMOSFERA "Negeri Cinta"

販売価格: 1,450円(税込)

商品詳細

ハープ・ギター、セロ、スリン、キーボードを自在に操るIwan Hasan(DISCUS、CHAMBER JAZZ等)を中心に結成されたポップ・バンドということで、ビデオ・クリップが制作された'Negeri Cinta'を始め、'Terbang'、'Sampai Akhir'、'Kasihku'、'Bersama Selamanya'といった気品漂うポップ・ナンバー、もしくは80年代インドネシア的ポップ/フュージョンといった雰囲気の'Panggil Aku'でワイン片手に和みたいところですが、それ以外では、どうしたってIwan Hasanならではのアレが出てきてしまうのです。なにせ1曲目からやらかしてくれちゃってます。エロスや緊張感を伴ったジャズ・エッセンス、怪しげなスリン、収斂味のあるギター、どう聴いたってポップじゃない曲がいつか飛び出してきて、聴き手の目ン玉も飛び出します。結局のところプログレ・ファン、DISCUSファン向けのポップ路線だよね。……ん?ポップなの?これ?
とりあえずこれを聴けば、Iwan HasanがDISCUSというバンドでどの様な仕事をしていたのかが垣間見れると思います。
Iwan Hasanはロックだ!

Fadhil Indra(DISCUS、MONTECRISTO、KJP、GELAP、MAKARA等)もドラムで参加。
Iwan Hasanの妹、Maya Hasan(C'BRIZ)もハープで参加。

2011年リリース
ファースト・アルバム

収録曲
01.Diam 3:34
02.Negeri Cinta 4:50
03.Terbang 3:13
04.Sampai Akhir 4:13
05.Jangan 4:19
06.Kasihku 5:06
07.Panggil Aku 4:12
08.Bersama Selamanya 5:03
09.Heavenly Earth Dance 2:45
10.Lepas 3:41
11.Indira 5:59

以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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90年代後半、シンフォもジャズも民族音楽も飲み込みながら知性とセンスを爆発させる唯一無二のプログレッシブ・ロック・バンドDISCUSがインドネシアから出現したその瞬間の衝撃は今でも忘れることができない。当時の日本国内での認知度は思った以上に上がらず、歯がゆい思いをしたが、有志の力と心意気のあるレベールのお陰もあって、彼らの二作目が日本国内で販売されることになり、DISCUSの名は驚きを持ってプログレ・ファンに迎え入れられることとなった。

その歩みは決して早くはないものの、彼らは世界中へとファン層を広げており、三作目でかなり大きなブレイクをするのではないかと私は思っていた。すでにアルバムに収録する楽曲もある程度は出来上がっていたはずだ。しかし、2010年5月。結成当時からのメンバーで管楽器担当のAnto Praboeが急逝したことによって事態は急変する。同じ結成当初のメンバーであり、音楽的にもAnto Praboeと互いに理解し合っていたギターとヴォーカルを担当するIwan Hasanがバンドを離脱。DISCUSサウンドの個性を形作っていた二人を欠いたバンドは歩みを止めざるを得ない状況となってしまった。これはプログレ界の重大な損失である。

けれど約一年間の時を経て、残されたメンバーが一念発起し、先ごろDISCUS復活の狼煙を上げたばかりであり、とりあえずはひと安心している。このあたりの経緯はまた何処かで触れることもあるかもしれないが、現在はそっとバンドの動きを見守りたい。

少しばかり前置きが長くなって申し訳ないが、ようやくここで今回の本題、 数カ月前にデビュー・アルバム『Negeri Cinta』を発表したばかりのATMOSFERAに登場していただこう。

ATMOSFERAはDISCUSを離れたIwan Hasanが、以前よりFadhil(DISCUSのキーボーディスト)と温めていたアイデアで、DISCUSよりシンプルな楽曲を制作するという目的を具体化させたバンドだ。メンバー構成は、ギター、キーボード、ハープ・ギター、チェロ、スリンといった楽器を操るIwan Hasanを中心として、DISCUS等他のバンドではキーボーディストだったFadhilはドラムで参加、その他、ジャズ畑のシンガーFitra、ギターはIwan Hasanの教え子でもあり、DISCUSのステージにも立ったことのあるEarl、そしてDISCUS以前のバンドから、DISCUSのごく初期まで一緒にプレイしていたベーシストのTerryという5人だ。

当初、ATMOSFERAというバンドはポップ・マーケットを意識したバンドだとIwan Hasanから聞かされていたのだが、いざ蓋を開けてみれば、ジャズ、エスニック、メタル、ニューエイジ、クラシック、プログレの要素が全体に散りばめられたもので、驚くと言うよりもその強烈なIwan Hasan印の楽曲にニヤけてしまった。なにしろ、冒頭の一曲目からジャズと怪しげなエスニック要素全開でワイルドなギターが絡んでくるし、果てはDISCUSで演奏しそうな曲まで収められているのだから。

とはいえ、これはポップ・バンド。STYX、AIR SUPPLY、ABBA、THE EAGLES、そしてインドネシアの80年代を代表するポップ・シンガー、VINA PANDUWINATAを敬愛しているので、そういったちょっと懐かしいポップなメロディと同様の、もしくはそれに通ずる雰囲気を感じ取れる楽曲も多い。たとえそのような音楽を日頃聴いていないとしても、その温かく穏やかなメロディには、ある種の郷愁すら感じられるのではないだろうか。また、ビデオ・クリップが制作されたアルバム・タイトル・トラックの‘Negeri Cinta’はIwan Hasanの妹であるハープ奏者のMaya Hasanもゲスト参加しており、クラシカルかつエレガントな仕上がりとなっている。

こんな風に書いていくと、一体どんなバンドなのか分かりづらくなってしまうが、それはIwan Hasan自身も説明するのは難しいと言っていたのだから仕方が無い。知性とプログレッシヴ・マインドが過ぎて、時折、ポップスの範囲から飛び出し気味の異形なるエレガント・ポップ。ポップスの皮を被った狼。いわば、「ちょいとあなた、耳と尻尾が見えてますよ」状態。

ところが、インドネシアにおいて‘Negeri Cinta’は都会を離れた農村地帯のラジオでも好評で上位にランクしていると聞いている。これは確かにポップスとしていかに優れているかの証明であると思う。とはいっても、日本ではインドネシアのポップスを聴く土壌は出来上がってはいないので、いきなりポップス方面のファンにお薦めする気はない。まずは、ちょっと変わったプログレ風味のバンドに興味を持つ方、そして当然DISCUSのファンには是非とも聴いていただきたい。Iwan HasanがDISCUSにおいてどの様な役割を担っていたのかも垣間見れるはず。

Iwan Hasanは何をやっても自分にしかできないスタイルで表現できる独自の個性を持った特筆すべきアーティストだということを再確認させられた。
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「Negeri Cinta」でハープをつま弾いているのはIwan Hasanの妹、Maya Hasan(C'BRIZのアルバムも聴いてね)。

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