COSHISH "Firdous"

COSHISH "Firdous"

販売価格: 1,300円(税込)

商品詳細

ムンバイを拠点に活動するメランコリック・ヒンディ・プログレッシヴ・ロック・バンド、COSHISH。ひとりの男性の人生を通して意識と精神の向上、遥かなる飛翔を描く深いコンセプトを伴ったデビュー・アルバム。

OPETH、KATATONIA、PAIN OF SALVATION、DEVIN TOWNSEND、TOOL、PORCUPINE TREEにインスパイアされた楽曲をを持ちつつも、インド音楽に影響されたヴォーカル・メロディ、そのコーラスは憂いの中から生まれる決意を感じさせ、どこまでも心地良く、そのゆらぎはまるで魂を包み込むかのごとく。綿密に構築されたリズム、複雑に絡み合うポリリズムをまったくそうとは感じさせない滑らかな構成で耳障り良く聴かせてしまう手練。

まずは3面開きのデジパックを広げてみよう。左には一人の青年が廃屋を見つけ中に入ろうとしてる場面。CDを取り出した中央には廃屋を探索して屋根裏へ上った場面。そして右にはその屋根裏にあった箱の中から数枚の写真を見つけ出している青年が映っていることが確認できるだろう。と、同時にジャケットに封入されている10枚の写真の存在に気がつくはずだ。そのあなたの手にした写真こそが、青年が廃屋で見つけた写真と同じものなのだ! そしてその10枚の写真の裏にはそれぞれ歌詞が書かれており、本作に収められた10曲との繋がりに気づく。

そう、ここからこの『Firdous』という作品の本編が始まるのである。

〜あらすじ〜
村の少年はいつか都会へ出て成功する事を夢見ていた。
その彼が成長したある日のこと、占い師から「あなたはより偉大な事柄に関わるために存在している」と告げられる。しかし、当時の彼にはそれが一体どんな意味を持つ言葉なのかまったくもって理解できないでいた。
それからしばらくの後、彼が村を離れ街へ向かおうとしていたまさにその時、暴動が起こって家族全員が殺されてしまったのだ。この事が原因で、彼の計画していた人生設計はめちゃくちゃになり、塞ぎ込んでしまう。この深い悲しみはとても簡単に拭い去れるものではなかったのである。
しかし数ヶ月後、過去の辛い気持ちを整理して夢を追いかける決心を固めた。身の回りの物を持ち出し、街へ移り住み仕事を見つけ、なんとしても成功を収めようと努力する日々。けれども彼は気付いてしまう。金持ちになって成功する為に頑張っていても、結局それは自分自身の気持ちを本当に満たしてくれるものではないことを。少年の頃から夢見ていていた構図はいわば、ただの幻想に過ぎないものであったことを。
この時点で、彼の精神はより高みへと昇り始める。物質的な富という幻想に陥っているこの世界の状況に気付いたのだ。そして自身の世俗的な所有物を一切放棄し、その幻想の向こう側を見る為に勇気を振り絞った彼は、ついに解脱するのである。

すべての曲が終了し、聴き手はここでデジパックを閉じる。すると目に入るのはジャケットのアートワークだ。そこに描かれているのは、そう、苦難の末、“Firdous(Paradise)”へと到達した物語の主人公の姿!

*CDに収録された楽曲は物語の話通りには並んでいません。写真(歌詞カード)に記された日付をもとに曲順を並び替えてお聴きください。その時、初めて本当の物語が語られます。そして、聴き手のこの行為は、廃屋で写真を見つけた青年と同じ……つまり自分もこの物語の一部となっていることを意味するのです。まさにこれはリスナー体験型コンセプト・アルバム!

Fm yokohama ROCK DRIVEのブログ内のコーナー、アジアン・ロック通信73にて紹介してます。

デジパック仕様。
2013年リリース。

レコーディング、ミキシング・エンジニアは敏腕Zorran Mendonsa。
マスタリングはOPETH、KATATONIA、PARADISE LOST等を手掛けてきたJens Bogren。

収録曲
01.Firdous 6:32
02.Raastey 4:46
03.Coshish 5:04
04.Behti Boondein 5:42
05.Woh Kho Gaye 6:15
06.Hum Hai Yahin 5:19
07.Maya 6:18
08.Rehne Do 4:59
09.Bhula Do Unhey 4:45
10.Mukti 7:57

以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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例えば、CDを数千枚持っていようとも、頻繁にブランド牛を食そうとも、タンスに入りきらないくらい洋服を買い揃えても、さらには畳の下に札束を敷き詰めていようとも、何故か満たされていないような気分になることはないだろうか。

今年発表された重要な作品のひとつとして、前回はシンガポールのKRATONを紹介したが、今回も2013年の締めくくりも間近という事で本年、非常に注目に値する作品を発表したバンドをもうひとつ紹介する。

インドはムンバイを拠点にするプログレッシヴ・ロック・バンドCOSHISH。彼らのデビュー・アルバム『Firdous』がとにかく凄い。バンドはTOOL、PORCUPINE TREE、OPETH、A PERFECT CIRCLE等にインスパイアされながらも、ヴォーカル・メロディは強烈にインド音楽からの影響を受けたヒンディ・ロックが基本にある。その伸びやかなコーラスは聴いているだけでα波が出ていると思える程の心地良さで、さらにそれは身体の芯、もしかすると魂にまで響いているのではないかと思わせる感覚すらある。しかし触発されたバンド群を参照してもおわかりになる通り、一筋縄でいくようなバンドではない。

COSHISHというバンド名には、"Attempt"とか"Trial"といった意味があるようで、バンドは、 "人生において、諦める事なく挑戦し続けていれば目標は達成できる"と考えており、"諦めずにやり続ける"ことがバンドにとっての哲学となっていると語ってくれたが、音楽面でもそれはかなりの取り組みを持って表現されている。何気なしに聞き流してしまうとそれはほとんど意識されないが、リズム面では複雑に構成されたポリリズムの嵐だったりするのである。それをテクニカルな音楽として聴かせずにシンプルにみせるというのがバンドの目標のひとつとしてあるようで、このもくろみは見事に成功しているといえる。ダイナミズムを保ったまま、メランコリックで心地よいメロディを紡いでゆく。意表をつく突飛な展開、これ見よがしなリズム転換、大げさな緩急というものはほとんど見当たらない。これは相当に洒落ているバンドだ。

洒落ていると言えば、アルバムのパッケージも素晴らしい。この『Firdous』はコンセプト・アルバムなので、ジャケットの裏表内側にも物語に関するものが描かれているのは当然だが、それとは別に10枚の写真が入っており、それが歌詞カードとなって物語の各場面をより印象的にさせている。

さて、この『Firdous』の内容をメンバーの話を基に少しここで述べておく。
この物語はジャケットを開いた時に始まる。三面開きのデジパックを広げると、3枚の写真が掲載されている。最初は、とある青年が廃屋を見つけて入ろうとしている場面。2枚目は探索しながら屋根裏へ侵入した場面。3枚目はその屋根裏にあった箱に入っていた写真を見つける場面。ここで聴き手である我々もジャケットに封入されている10枚の写真を見つける。この写真こそがその青年が見つけた写真と同じものなのだ。そして、その写真を持ちつつ聴き手がCDを再生した時に本編が始まる。

写真にはある男が映っていた。村に住んでいたその若者はいつか都会に出て成功したいと思っていた。ある日、彼が予言者のもとへ行くと、「お前はより大きな事柄に運命づけられている」と伝えられるが、その時の若者はまったくその意味がわからなかった。そしてようやく街に出ようとしたその時に彼の家族は暴動によって殺されてしまう。家族を失い、夢を追いかけている場合でもなくなってしまった彼はしばらくの間そのショックから塞ぎ込んでしまった。しかし、都会へ出る夢は消し去り難く、数ヶ月の後に村を離れる決意を固める。けれども、街で仕事を見つけ夢に向かって生活を始めてみたものの、しばらくしてみると、自分の描いていた夢は幻影だったと気づいた。金持ちになって成功したとしてもそれは本当に彼を幸せにしたわけではなかったのだ。この世界は、ただ物質的な富という幻に陥っているだけなんだと、精神的に高くなった彼は気づく。そして自己の所有物を放棄し、その幻影の向こう側を見る為の勇気を集め、魂の救済、もしくは解脱といったものを彼は成し遂げる。

アルバムを聴き終わり、ジャケットを閉じると、聴き手の目に入るのは"Firdous(Paradise)"に到達した物語の主人公が描かれたアートワークなのである。

非常に良く出来ている。最終的な部分の理解となるとかなりの深さになるが、物語の内容はほとんどの人がすぐに飲み込めるだろう。この部分にも楽曲と同じバンドの理論が働いているような気がする。このアルバムの配給はUNIVERSAL MUSICなのだが、あの大手の会社が惚れ込んで契約しただけの事はあると思う。音質的にも、じっくり時間をかけて資金を貯めて制作しているだけあり、とても素晴らしいものになっている。やはり敏腕エンジニアZorran Mendonsaの手によるレコーディングとミックス、そしてこれまでにKATATONIA、OPETH、PARADISE LOST等を手掛けてきたスウェーデンのエンジニア、Jens Bogrenによるマスタリングが間違いなく功を奏している。

なお、『Firdous』というアルバムは、もうひとつ面白い仕掛けがあり、普通にCDを再生しているだけでは順番通りに物語が進まないようになっている。つまり、CDに収められている曲順が物語の順序と合致していないのだ。そこで、聴き手は封入されていた10枚の写真に記されている撮影された年月日を順番に並べ替え、その通りに曲を再生して初めて正しい順序で『Firdous』がコンセプト・アルバムとして完成するわけである。そう、青年が廃屋の屋根裏で写真を見つけたように、我々聴き手もこのアルバムの一部となる必要があるのだ。最高に洒落ている。


そういえば昨今、断捨離がどうのこうとちょっと流行っていたようですが、このアルバムでも聴いてもう少し深い所に踏み込んではいかがでしょう。この年末年始なんて良い機会だと思います。もっとも、私は物質的なものは何も捨てられないんですけどね。
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動画は廃屋で問題となる10枚の写真を発見する様子を描く「Raastey」のPV。

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