THE SECRET SEA “The Secret Sea”
THE SECRET SEA “The Secret Sea”
販売価格: 1,900円(税込)
商品詳細
どうしようもなく打ちひしがれた夜
ぼくは逃げる どこまでも遠くへ ただ遠く
気づけば見知らぬも懐かしい浜辺を駆けていた
すべてを脱ぎ去った足取りは羽のように軽やか
音もなく海原へとすべり込む 波が手招くままに
静かの海はぼくを受け止めて
包み 洗い 透き通らせる
たわむれに目映い色彩の魚を追い ひたすらに遠く
百群の海は空との境目もなく
泳いで天へと昇っていくのは容易だ
渡り鳥と星が進むべき方向を指し示し
天つ風がそっと運んでくれる
ぼくの身体は滲むように景色に溶けだして
やがて世界はぼく自身になる
みんなひとりひとりの秘密の海を持っている。何人たりともこの尊い世界を汚すことは許されない。
息をすれば、瞬きをすれば、崩れて消えてしまうかもしれないような瞬間が幾度も訪れる。けれども、今回はその不安をぬぐい去るような柔らかな光が差し込み、パステルの色彩が踊りだす。
イスラエルきってのフォーク貴公子Amit ErezがTHE SECRET SEAというバンド形式で発表するフル・アルバム第一弾。
というわけで、またしてもAmit Erezさんが名盤を生み出してくれました。さすが!
2013年発表。
覗き窓使用のスリップ・ケース入り。
収録曲
01.3 3:48
02.Afterlife 3:30
03.Whenever The Sun Comes 4:00
04.Elegy 4:08
05.Not About Us 4:00
06.Safe Asylum 0:54
07.Killing Light 4:28
08.Kind Of Dance 5:33
09.Slow Burning Light 7:50
10.Secret Sea 5:00
11.Heavenly Signs 2:59
以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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もう何年も異常気象という言葉を聞かされて一体何が異常なのかもわからなくなってきかかっているが、東京も少しは春めいてきたことは実感している。この季節、緑は芽吹き花は咲き始めるが、人間関係を含む多くの環境の変化等も多く、そこに上手く適応できなければ、自分以外のすべての何もかもに追い抜いていかれて、独り取り残されたような気持ちになる。おそらく、もっとも残酷なのは春なのかもしれない。
けれども、そんな気持ちを理解して優しく受け止め、解き放ってくれるような音楽が存在したのなら…
イスラエルに“フォークの貴公子”と言える程の気品を漂わせるAMIT EREZというミュージシャンがいる。彼の音楽は2003年のデビュー以来、ELLIOT SMITH、NICK DRAKE、JONI MITCHELL等を引き合いに出されて語られることから、その純粋さと繊細さは容易に推察できるだろう。ただ、ELLIOT SMITHには最も影響されたと語る彼だが、実際には80年代のメタルをはじめ、PJ HARVEY、SPARKLEHOUSE、TELEVISION、LOU REED、初期GENESISとPETER GABRIEL、INTERPOL、METRONOMY、THE FLAMING LIPS等といったあたりも愛聴している。よって、ここ数年は、前述した引き合いに出されるミュージシャン達よりロック寄りのアプローチも行うし、さらには劇的な展開でプログレッシヴ・ロックの範疇に入れても良いような作品を作り上げている。
そういう意味ではまさに、2009年に発表された『Last Night When I Tried To Sleep I Felt The Ocean With My Fingertips』は、キーボーディストやストリングス・カルテット等の多くのセッション・ミュージシャンを雇ってドラマティックかつリリシズム溢れるプログレッシヴな名作を生み出した。しかし、この作品、それ以前に発表された『Black Light』や『Ami Erez』発表後に行われた多くのショウの連続から空虚な気分に捕われて鬱状態となり、新曲を書くことに大変な苦労したというだけあって、少々マイナー調の空気が支配的ではあったことも事実。
それから4年。AMIT EREZはEATLIZというちょっと風変わりなロック・バンドや、PAPER CUTSというデュオでの活動も行っていたが、自身はバンド形態での活動を望み、旧知の仲や良き理解者を集め、ギター/ヴォーカルのAMIT EREZを筆頭にストリングス、キーボード、ドラム、ベース、パーカッションという6人編成のTHE SECRET SEAというバンドを結成。シングルを数曲発表した後、2013年末に最新アルバム『The Secret Sea』を発表する。
前作2009年のアルバムのタイトルや今回のバンド名(曲名)にも表れている通り、AMIT EREZは水や海といったものから創造の原動力を得ている。しかし、今回はそれを含みつつも、“光”というものに重要な役割が与えられていると説明してくれた。
これまでの作品と、今作の違いを挙げれば、ソロではなし得なかったTHE SECRET SEAというバンドが生み出すユニークなサウンド、もうひとつは自身がこれまでに経験してきたことが表現されているという部分だと話している。彼は鬱状態を経験し、自信喪失していた時期もあった。しかし、ここにきて彼は着実に前へと踏み出していることがわかる。美しいという言葉では表現のしようもない美しさは無論のこと、危うい程の繊細さや儚さといったものは依然として存在しているが、それをそっと支えるような温かみのある歌声はこれまでにないものであるし、さらには決して押し付けてこない包み込むような心地よい明るさがあるのも今回の大きなポイントだろう。
一度深く沈んだ彼の心は再び浮上し、今、陽の光に照らされ始めている。そしてそれは聴き手にも伝播し、鬱いだ心に優しい光を降り注ぐ。そして知らずのうちに心を開き、秘密を打ち明け、解き放たれてゆく。
その瞬間。ひょっとしたら思いもかけず涙がこぼれ落ちるかもしれない。きっとそれこそが“秘密の海”の一滴なのだ。
ここ日本でもマニアの間ではNO NAMES、SHESHET、JERICHO、KAVRET、YONI RECHTER、ZINGARE、AVIV GEFFEN、ROCKFOUR、TRESPASS、SOLSTICE COIL、USELESS ID、ORPHANED LAND、AMASEFFER、SALEM等を始め、数多くイスラエルのミュージシャンが知られることとなったが、AMIT EREZ率いるTHE SECRET SEAも疑う余地なくイスラエル音楽界の至宝のひとつである。
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話せばわかる。…とも思えないのでアルバムのサンプルをどうぞ。
聴けばわかる。
ぼくは逃げる どこまでも遠くへ ただ遠く
気づけば見知らぬも懐かしい浜辺を駆けていた
すべてを脱ぎ去った足取りは羽のように軽やか
音もなく海原へとすべり込む 波が手招くままに
静かの海はぼくを受け止めて
包み 洗い 透き通らせる
たわむれに目映い色彩の魚を追い ひたすらに遠く
百群の海は空との境目もなく
泳いで天へと昇っていくのは容易だ
渡り鳥と星が進むべき方向を指し示し
天つ風がそっと運んでくれる
ぼくの身体は滲むように景色に溶けだして
やがて世界はぼく自身になる
みんなひとりひとりの秘密の海を持っている。何人たりともこの尊い世界を汚すことは許されない。
息をすれば、瞬きをすれば、崩れて消えてしまうかもしれないような瞬間が幾度も訪れる。けれども、今回はその不安をぬぐい去るような柔らかな光が差し込み、パステルの色彩が踊りだす。
イスラエルきってのフォーク貴公子Amit ErezがTHE SECRET SEAというバンド形式で発表するフル・アルバム第一弾。
というわけで、またしてもAmit Erezさんが名盤を生み出してくれました。さすが!
2013年発表。
覗き窓使用のスリップ・ケース入り。
収録曲
01.3 3:48
02.Afterlife 3:30
03.Whenever The Sun Comes 4:00
04.Elegy 4:08
05.Not About Us 4:00
06.Safe Asylum 0:54
07.Killing Light 4:28
08.Kind Of Dance 5:33
09.Slow Burning Light 7:50
10.Secret Sea 5:00
11.Heavenly Signs 2:59
以下はFM yokohamaの番組『ROCK DRIVE』のブログ内コーナー「アジアン・ロック通信」用に書いた文章です。
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もう何年も異常気象という言葉を聞かされて一体何が異常なのかもわからなくなってきかかっているが、東京も少しは春めいてきたことは実感している。この季節、緑は芽吹き花は咲き始めるが、人間関係を含む多くの環境の変化等も多く、そこに上手く適応できなければ、自分以外のすべての何もかもに追い抜いていかれて、独り取り残されたような気持ちになる。おそらく、もっとも残酷なのは春なのかもしれない。
けれども、そんな気持ちを理解して優しく受け止め、解き放ってくれるような音楽が存在したのなら…
イスラエルに“フォークの貴公子”と言える程の気品を漂わせるAMIT EREZというミュージシャンがいる。彼の音楽は2003年のデビュー以来、ELLIOT SMITH、NICK DRAKE、JONI MITCHELL等を引き合いに出されて語られることから、その純粋さと繊細さは容易に推察できるだろう。ただ、ELLIOT SMITHには最も影響されたと語る彼だが、実際には80年代のメタルをはじめ、PJ HARVEY、SPARKLEHOUSE、TELEVISION、LOU REED、初期GENESISとPETER GABRIEL、INTERPOL、METRONOMY、THE FLAMING LIPS等といったあたりも愛聴している。よって、ここ数年は、前述した引き合いに出されるミュージシャン達よりロック寄りのアプローチも行うし、さらには劇的な展開でプログレッシヴ・ロックの範疇に入れても良いような作品を作り上げている。
そういう意味ではまさに、2009年に発表された『Last Night When I Tried To Sleep I Felt The Ocean With My Fingertips』は、キーボーディストやストリングス・カルテット等の多くのセッション・ミュージシャンを雇ってドラマティックかつリリシズム溢れるプログレッシヴな名作を生み出した。しかし、この作品、それ以前に発表された『Black Light』や『Ami Erez』発表後に行われた多くのショウの連続から空虚な気分に捕われて鬱状態となり、新曲を書くことに大変な苦労したというだけあって、少々マイナー調の空気が支配的ではあったことも事実。
それから4年。AMIT EREZはEATLIZというちょっと風変わりなロック・バンドや、PAPER CUTSというデュオでの活動も行っていたが、自身はバンド形態での活動を望み、旧知の仲や良き理解者を集め、ギター/ヴォーカルのAMIT EREZを筆頭にストリングス、キーボード、ドラム、ベース、パーカッションという6人編成のTHE SECRET SEAというバンドを結成。シングルを数曲発表した後、2013年末に最新アルバム『The Secret Sea』を発表する。
前作2009年のアルバムのタイトルや今回のバンド名(曲名)にも表れている通り、AMIT EREZは水や海といったものから創造の原動力を得ている。しかし、今回はそれを含みつつも、“光”というものに重要な役割が与えられていると説明してくれた。
これまでの作品と、今作の違いを挙げれば、ソロではなし得なかったTHE SECRET SEAというバンドが生み出すユニークなサウンド、もうひとつは自身がこれまでに経験してきたことが表現されているという部分だと話している。彼は鬱状態を経験し、自信喪失していた時期もあった。しかし、ここにきて彼は着実に前へと踏み出していることがわかる。美しいという言葉では表現のしようもない美しさは無論のこと、危うい程の繊細さや儚さといったものは依然として存在しているが、それをそっと支えるような温かみのある歌声はこれまでにないものであるし、さらには決して押し付けてこない包み込むような心地よい明るさがあるのも今回の大きなポイントだろう。
一度深く沈んだ彼の心は再び浮上し、今、陽の光に照らされ始めている。そしてそれは聴き手にも伝播し、鬱いだ心に優しい光を降り注ぐ。そして知らずのうちに心を開き、秘密を打ち明け、解き放たれてゆく。
その瞬間。ひょっとしたら思いもかけず涙がこぼれ落ちるかもしれない。きっとそれこそが“秘密の海”の一滴なのだ。
ここ日本でもマニアの間ではNO NAMES、SHESHET、JERICHO、KAVRET、YONI RECHTER、ZINGARE、AVIV GEFFEN、ROCKFOUR、TRESPASS、SOLSTICE COIL、USELESS ID、ORPHANED LAND、AMASEFFER、SALEM等を始め、数多くイスラエルのミュージシャンが知られることとなったが、AMIT EREZ率いるTHE SECRET SEAも疑う余地なくイスラエル音楽界の至宝のひとつである。
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話せばわかる。…とも思えないのでアルバムのサンプルをどうぞ。
聴けばわかる。
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